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旅するWebライター古性のちさんが、旅をする理由

米本 和弘

古性のちさんは、今年の1月に世界一周旅行から帰国後、旅をしながら働くというワークスタイルを提案する団体「旅、ときどき仕事」を立ち上げられ、今年の7月からは旅することばと写真展「まるで呼吸をするように旅をしていた」で全国を巡回されるなど、ライター業の傍ら幅広い分野で活躍されています。そんな彼女にmydスタッフがお話を伺ってきました。

古性のちさん_写真展02
旅することばと写真展「まるで呼吸をするように旅をしていた」@京都

さっそくですが、のちさんご自身が写っている写真も多いようですが旅先ではどのように撮影されているのでしょうか。

三脚を使う時もありましたが、基本的にはその場に居合わせた人に撮ってもらっています。有名な撮影スポットでは順番待ちができていたりするので、自然と次の人が前の人を撮るといった流れもできてたりしましたね。中には、もっと違う角度で撮ってほしかったなという作品もあります。もうちょっと海を広めに写して欲しかったみたいな写真もありました。

 

現地の人とコミュニケーションを取る場面が多かったと思いますが、英語はご堪能なのでしょうか。

全然なんです。フィリピンのセブ島で1ヶ月間の語学留学をしたことがあるのですが、日本に戻ってきたらすぐにしゃべられなくなって。だから、旅先でも言葉がほとんど伝わらなかったので、私がしゃべっていると何人も集まってきてみんなで理解しようと考えてくれるんです。言葉数は多いのでそこから想像してもらっていました。

 

展示作品ではポーランドに行かれたときの重いテーマの写真もありましたね。

アウシュヴィッツという強制収容所なのですが、第二次世界大戦中、ドイツによるユダヤ人の大量虐殺が行われていた場所なんです。ここでは100万人以上もの方が亡くなったという話もあります。そういった悲しい歴史のある場所だったので、前日の夜も早く就寝して万全の体調で向かいましたがそれでもやっぱり気持ちは落ち込んでしまいました。

 

写真展と今のお話を伺い、遠い世界のそういった歴史をリアルに発信するというのもまた大切なことだと思いました。
旅をする上で気をつけられていたことはありますか。

安全にはお金をかけるようにしていました。インドに行ったときは、空港に到着したら事前に予約していたタクシーに乗ったり、いつもは泊まらない日本人宿に泊まったりもしましたね。

 

事前に詳しく調べてから計画的に回られたのでしょうか。

予定にはなかったのですが一度日本に帰国したりと、行き先やスケジュールはある程度自由に決めていました。ピピ島に行ったのも名前の響きがかわいかったので。

古性のちさん_写真展
写真に添えられるのちさんの言葉

写真展もされて、ライターだけでなくカメラマンという側面もあるかと思いますが、文章と写真ではどちらに重点を置かれているといった比重みたいなものはありますか。

本業の方からは怒られてしまうかもしれませんが、ライターであれば小さい頃から文章を書くのが好き、カメラマンであれば写真を撮ってみたら楽しくてといった方が多いと思いますが、私はどちらでもなくて自分が旅を続けるための手段だと思っています。旅をする手段になるような職業だったら喜んで転職すると思います。

 

旅をしたいという動機、世界一周をすることになったきっかけはあったのでしょうか。

世界一周に行くと言い出したのは16歳の頃でした。昔から決められた集団生活が苦手というのがあって、幼稚園も泣き叫んで通ってたんです。小・中も頑張って通ったのですが、高校が単位を取得すれば卒業できるところだったのでそこで初めて行く・行かないという選択肢ができたんですね。そしたらもちろん行かないじゃないですか。

大人というものは、会社に通わなければ生きていけないと思っていたんです。そんなとき、高橋歩さんという世界一周を発信されている旅人がいて「こんな大人もいるのか」と衝撃を受けました。私は普通の学生、普通の大人が当たり前にできる”学校に通う、会社に通う”ということができないのであれば、場所に捉われないで生きる道しかないのではと思いました。そして、とりあえず歩さんの真似をしようと思うようになりました。当時の私には世界一周をする方法として街中にポスターが貼ってあるピースボートに乗るといった情報しかなかったので、ピースボートのスタッフになったんです。

 

実際、スタッフもされてたのですね。

はい。ただ、18歳の進路相談のとき先生にピースボートに乗って世界一周をしたいと相談したら、他の友達は親が一人だけの三者面談だったのに、私は両親を呼ばれて四者面談になってしまって。「古性さんは学校にも来なければ、世界一周に出るって言ってますがお母さんどうですか?」って言われ、両親も初耳だったので「社会人というものを経験してから自分の好きなことをやって欲しい。せめて手に職を持ってくれ」と。それからは世界一周をできる手に職ってなんだろうとずっと考えていたんですけど、たまたま美容学校に行く知り合いから「はさみさえあればどの店舗でも働けるしね」と聞いた時、私は「あ、どの店舗でもってことは世界中のお店でもということか」と思って美容師を選びました。その頃から職の軸には旅がありましたね。

古性のちさん_写真展01
写真にも出てくる旅で使用していたバックパック

これまでも旅を軸にして職種を選ばれてきた中で、今されているライターという仕事へのモチベーションが高まってくることはないのでしょうか。

今までデザイナーもやっているのですが、ライターをしていて美容師やデザイナーよりもその国や、場所の良さ悪さを伝えられるのがいい仕事だなと思っています。

 

旅、ときどき仕事のメンバーとはどこで出会ったのでしょうか。

世界一周に出かけて仕事しながら旅していた時、それまでフリーランスになりたいとかはなかったのですが、いざなってみたら「なんで、こんな孤独なの」となってしまって。旅中に仕事を依頼していただけることが増えていたので、帰ってきてからもこのままフリーランスで行こうとは思ったのですが「またこの孤独を続けるのは嫌だな」と思っていました。フリーでもいいけど同じ孤独を埋めあえる相手が欲しいなと選択肢を探っている時に、一緒に旅もできるし一緒にいろんなカフェやコワーキングにも行ける、同じ立場のフリーランスが集まれば理想的な状態になると思ったんです。そして、トライアルで”旅、ときどき仕事”という名前をつけて、昔住んでいた宮古島で、宿もコワーキングも手配して無料でいいので一緒に仕事してみませんかと呼びかけた時に20人くらい集まったんですよ。今のメンバーもそこに集まったメンバーだったりするんです。

 

最後になりますが、展示会場のひとつとして京都を選ばれた理由はあるのでしょうか。

実はこれまでは所縁も全くなくて、交通機関が発達しているところということで大阪と京都のどちらかを考えていました。今年の5月にENYSiという日本を紹介するサービスのアンバサダーとして京都に来た際に、西陣エリアにあるCAMPTON10という宿に泊まって発信するというミッションがありました。そのとき、すごく面白くて個展するなら京都しかないと思いましたね。そして、その時にお会いした人とのご縁もあって今回、京都で展示をすることになりました。

西陣はいわゆる京都の街並みが残っていていいですよね。他にもエリアによって雰囲気も全然違うので、今度いらした際はぜひ色んな場所に行ってみてください。伏見の酒蔵がある辺りに行けば街並みもいいし、美味しい日本酒も飲めたりしますよ。

めっちゃいいですね。行きたいなー。行きます!

 

古性のちさん写真のちさんは少し話しているだけでも面白い考え方だったり、言葉がばんばん飛び出す方でした。旅をしながら現地の人とも仲良くなれる、ひとつの素質なんだろうなと思いながらずっとお話を伺っていました。また、昔からぶれずに旅という軸を持ってきた方だからこそ、彼女の文章や写真には技術だけでは伝えきれない現地のリアルな様子や、のちさんご本人の感性が上乗せされているのだと思います。

次に京都にいらした際、イベントのご出演や二度目の写真展などしてもらいたいなと思っています。その時は関西にお住いのみなさんものちさんに会いに行かれてはどうでしょうか。

そして、全国を旅するように巡回する写真展も12月1,2,3日の東京でフィナーレを迎えられます。期間中はこれまで回られた個展の報告会や、勉強会、パーティーも行われ一大イベントになるそうです!

旅することばと写真展/旅、ときどき仕事 報告会

■日時
12月1日(金) 19:00~21:00
12月2日(土) 13:00~20:00
12月3日(日) 12:00~17:30
■場所
原宿VACANT
※詳細はこちらのイベントサイトでご確認ください

【ブログ】のちたび。
【Twitter】 @nocci_84
【Instagram】nocci_trip
【Webサイト】旅、ときどき仕事

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米本 和弘
マーケティングコンサルタント、Webクリエイター、ライター。広告代理店に勤めたのち独立。THE読書ズ、ニジノ絵本屋スタッフとしても活動中。

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