龍安寺

「龍安寺石庭とキティちゃんの共通点?」詳しすぎる、辻井輝幸の京都随想記

辻井 輝幸

第十二回「龍安寺石庭とキティちゃんの共通点?

世界遺産の龍安寺は石庭で有名です。
龍安寺の石庭は1975年にエリザベス女王が見られたことで世界的に有名になりました。
ネットや本などでは、「エリザベス女王は養安寺の石庭を称賛した。」とよく書かれていますが、私の記憶ではエリザベス女王は龍安寺の石庭をご覧になられた時に「私にはわからない。」と言われたという報道だったと記憶しています。
龍安寺の石庭の大きさは幅25m、奥行き10mで決して大きな庭ではありません。おまけに石庭ですから華やかさがないです(しだれ桜が咲いた時は無彩色の庭にピンクが映えますが)。

白砂を敷き詰めた庭に15個の石を五、二(七)、三、二(五)、三(三)に点在させた石庭です。
禅宗文化の時代、禅の境地を感じられる庭園といえます。この石庭には「七五三説」と「虎の子渡し説」がありますが、このWEBサイトの担当の方から「ネットなどに書かれていないことを書いてください」と言われていますので、二つの説はネットでお調べくださいね。ここでは書きません。
でも、これだけは書きますが、「なぜ、石は15個なのか?」ということです。
東洋の世界では「15」という数字は「完全」を表す数字です。

昔の暦(旧暦)では新月から次の新月までを1か月としました。
つまり、月の真ん中の15日目の夜の「15夜」は満月(に近い)になります。
よって、「15」は完全数と呼ばれました。でも、龍安寺の石庭を見た時に15個の石の内、かならず1個は隠れて14個しか見えないといわれます。

古来より日本人は完全な物を避ける気持ちがありました。
建築物でも、「完成したとたんに朽ちていく」ためにわざと未完成にしたり、一か所だけ不完全にしたりすることが多かったようです(日光東照宮・石清水八幡宮・清水寺の馬駐など)。

お茶の世界でも、昔からひずんだ茶碗や割れて金継をした茶碗、他国では失敗作と思われるものも珍重されてきました(「へうげもの」というマンガの主人公の古田織部などは変な物大好き人間ですね)。
私はこういう不完全な物を好む日本人の気質が大好きです。それは万人に愛されるものではないかもしれませんが、一部の熱狂的なファンを生み出すのでしょう。
そういう気質が日本の文化・芸術を創りだしてきた一つの要因になっています。
私は「普通じゃない」という言葉が「けなす言葉」ではなく「誉め言葉」なるような世界がいいなぁと思います。

実は全部の石(15個)を見る事は出来ないと書きましたが、見る事の出来る場所があります。
奥から2枚目の板の上に立つと、なんとか15個全部を見る事ができるんです(でも、庭園は本来、座って見るものかもしれませんが)。
あと、思いついたのはグーグルマップで上(宇宙)から見れば、確認できると思ったのですが、私のパソコンでは15個までは無理でした(これは禁じ手ですかね)。

龍安寺の石庭の凄さは空間を超越しているところでしょうか。
面積が75坪しかないのに、その広さは見る人の考えに委ねられます。
15個の石を見て、医者は「血液中の病原菌」をイメージするかもしれませんし、天文学者は「宇宙の中の小惑星」を、また一般の人は「海の上の島々」をイメージするのでしょうか。
面積は75坪ですが、見る人の心や考えによって無限大の庭になるのが「龍安寺の庭園」です。

私はサンリオのキャラクターの「キティちゃん」に「龍安寺の石庭」との共通点を発見しました。
「キティちゃん」のデザインの最大の特徴は口がないことです。
最近はロックグループの「キッス」とのコラボで口のある(舌を出した例の「キッス」のシールが有名です)「キティちゃん」も出現していますが、原則としては口がないデザインです。
口がないため、「キティちゃん」を見ている人が悲しい時には「キティちゃん」も一緒に悲しんでいるように感じに、うれしい時に見ると同じく喜んでいるように感じるといいます。
龍安寺の石庭を作庭した人物と通じるような発想じゃないかなと思うんです。
私の勝手な思い込みかもしれませんが。
ちなみに、作庭者が誰かは現在よくわからず、ここでは、そのことについて深く立ち入りません。

「キティちゃん」は現在、世界中にファンがいます。
昔はこういうキャラクターは子供の物で大人が持っていると、幼稚と見られかねないのでマーケットが限られていました。
それが「キティちゃん」の頃から大人のセレブ達にも愛されて、世界中のあらゆる世代にファン層が広がっていったようです。
それまでは、ディズニーのキャラクターくらいしかそういったものはなかったでしょうか?

「キティちゃん」をデザインした方は日本人の女性だそうです。
日本人なら、心の奥に龍安寺の石庭に繋がる考えがあったのかもしれません。
龍安寺の石庭をご覧になった時には、どうぞキティちゃんを・・・(そんなアホな)。失礼しました。

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辻井 輝幸

辻井 輝幸

【京都観光ガイド】1956年、京都市下京区の生まれ。京都産業大学経済学部卒。子供の頃の遊び場は東本願寺と西本願寺。京都の事なら、何でも興味あり。得意分野は「美術(絵画)・建築(昭和初期以前)・天文(歴史関連)」、趣味は「歩くこと(1日に4万歩以上歩くことも)」、資格は「京都観光文化検定1級・茶道文化検定2級を所持」

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