Kyoto

坂本龍馬も愛した酒どころ伏見で昼飲み3000円ベロベロツアー

佐藤ルーミー

日本を代表する酒造メーカーがひしめく京都・伏見。
その酒どころとして有名な伏見で3000円あったら昼からどれくらい飲めるのだろうという素朴な疑問の検証をしてみることにした。


平たくいうなら3000円ベロベロ計画というただの飲んだくれの願望を実行に移したまでの話である。
京阪「伏見桃山」駅を下りたところからスタート。まだ精悍な顔つきの野口英世を3人引き連れて改札を出た。
伏見地区の一番の繁華街は駅から出てすぐの大手筋商店街である。
ここには昔ながらの商店や全国チェーン店、銀行などが道の両側に並び賑わいを見せている。
このアーケードをぷらぷら歩いていると突然私のアルコールレーダーが反応した。
そこは一見、酒屋さんなのだが・・・。

吟醸酒房 油長

外観は蔵。その軒先にはズラリと日本酒が並んでいる。
ふむふむ、やはり地元伏見のお酒を前面に出しているようだ。
そこまではふつーの酒屋さんなのだが、私のレーダーを甘く見ない方がよい。
店の奥から強い気を感じる(気といっても手から何か出たりするようなものではなく単なる酒気のことです)。
のぞいてみるとカウンターがあるではないか。


そしてまだ午前中なのに賑わっている。恐ろしや酒の町。おら、わくわくしてきたぞ!
そう、この吟醸酒房油長では約20ある伏見の酒蔵が発売している日本酒の飲み比べができるのだ。
その数なんと90種類!!

これら銘柄の中から3つを選んで味の違いを楽しむシステム。
ぐい飲みサイズだと一つ200円ほど。グラスになると500円ほど。
ぐい飲みサイズで良ければ3つ合わせて600円で堪能できてしまう。
や、安い。(実際にはお口直し用のお豆腐と付き出しがついて+200円)

いざ決めようと思っても数が多すぎてどれを選べば良いか皆目見当がつかない。
参った。。しかしご安心。日本酒コンシェルジュならぬ酒房のご主人がアドバイスをしてくれる。
そこで私が選んだのはこちら。
①「黄桜 吟醸 伏見の竜馬」 (150円)
②「北川本家 富翁 純米吟醸原酒 にごり酒」(200円)
③「招德 2BY 純米大吟醸 古酒」(380円)

3種のお酒が運ばれてきた。ご主人が一つ一つのお酒について簡単な説明をしてくれる。ふむふむ。
そして盆にちょこんと乗った豆腐は飲み比べのお口直しのためだそうで、なるほど調味料はついてない。

①瓶のラベルには日本史上1,2を争う革命家である坂本龍馬先生が太平洋の向こうをにらんでいる肖像。
もちろんこれは龍馬が伏見・寺田屋の女将を京都の母と慕ったことに由来しての銘柄である。
この銘柄は京都地区限定販売というレアさにも惹かれ頼んでみた。
そして恐る恐る竜馬先生を一口飲んでみた。すると、血風吹き荒れる幕末の味が口の中に広がった!!
なんてことはなくスッーと喉を通っていった。決して筋骨隆々な味ではない。クセがなく非常に美味しい。
これが文明開化ぜよ!!!
という声が聞こえた。(ちなみに私は幕末好きな親戚のお土産にこれを買いました)

②これまで数ある日本酒を飲んできたが、にごり酒と正面から向かい合うことはなかった。
そこで今回は良い機会だと思い、原料米を58%まで磨いたとされる贅沢な吟醸のにごりをいただいた。
し、白い。そして口に運ぶとなめらか〜!!北川さん、やらはりまんなぁと心の中で感嘆。
お酒の紹介で官能的とあったが、まさしくその通り。白くにごる富翁の吟醸にごりはエロスが漂う。
こちらの前代未聞のエロいお酒も冬季限定商品。
http://www.tomio-sake.co.jp/syouhin/nihonshu/24.html

③えっ!ウイスキーやワインならともかく日本酒にも熟成というジャンルがあったとは。
このお酒はなんと20年も寝かされていたという、まさに秘蔵の名が相応しい古酒。
それもそのはず、おちょこの中が茶色い。日本酒では見たことのない色になってますけど。
熟成されて琥珀色になった日本酒。そのお味は如何に?
・・・ブランデー?いやいや、日本酒の風味もするがとにかく味が濃い。
普段から洋酒を飲む私は大変気に入りました。
江戸時代や戦時中に役人の目を逃れ蔵に隠し続けた酒。
そして時が経ち、ゴロンと出てきた忘却の彼方の一升瓶の味はこんなだっただろうかと思いを馳せる。
招德公式ホームページ : http://www.shoutoku.co.jp/company/

酒代930円。
残金2070円。

ぐい呑3杯で珍しいお酒が飲めてまだ1000円いってない。贅沢な時間だった。

『吟醸酒房 油長』
Open : 11:00 ~ 22:00
Close : 火曜日
Tel : 075-601-0147
Website : http://www.kyoto-wel.com/shop/S81128/index.html

Map :

黄桜 カッパカントリー

次に向かったのは黄桜カッパカントリー。
カッパってあの河童?しかし、こちらはれっきとした酒造メーカーのアンテナショップ。
酒と河童?Why!??となるでしょうが、それは後々。

付近には酒の仕込み水を一般に解放したスポットがあり、酒造りに使われる上質な水を持ち帰ることができる。
蛇口の近くには人だかりが出来、みんなポリタンクやペットボトルを持っていた。


飲んでみたかったが一人当たりの制限以上に水を汲むような乾いている人がたくさんいたので諦めた。

歩いている途中、柴犬とすれ違った。

散歩かなと思っていると向こうからまた柴犬。
伏見は柴犬が多いな、と思っていると次々と柴犬が現れた。

なんだこの柴犬の群れは!!

我先にと水に群れる飢えた人々。そしてこの大軍団。
むむ、これはどこかで見たことあるぞ・・・アレだ!
「MAD MAX 怒りのデスロード」イモータンジョーのあの大軍団だ!!
見よ、この勇姿。ベビーカーに乗った柴犬はまさしくウォーボーイズそのものではないか!!

軍団はどうやらカッパカントリーから出てきた模様。すれ違ったウォードッグズはカッパの討伐隊だったのだろうか。

さてこの黄桜カッパカントリーでは出来立ての黄桜ビールや日本酒がコース料理やランチと共に楽しめるレストランになっている。


もちろんドリンクだけやショップのみの利用も可。中庭に出ている屋台からは新鮮なビールが注がれ、青空の下ゴクリと最高な瞬間を楽しめる。

併設の記念館は必見。黄桜の歴史や酒造りが学べる。
ん?館内に沢がある。とその瞬間、のけぞってしまった。
カッパじゃーっ!!カッパが出たぞー!!!目の前にカッパが立っている。はよ逃げな尻子玉を抜かれるばい!!
ん?待てよ。よく見てみると実物大(想像)のハリボテじゃないか。
と、このようにありとあらゆるカッパのゆかりの品々が集められていたり、
カッパの生態系や解剖図までパネルで展示していたりという遠野物語の博物館に来たのだと錯覚させられる
珍妙な酒造メーカーの記念館となっている。
残念ながら撮影NGのためその目でカッパを学びに行ってくだされ。

『黄桜 カッパカントリー』
〒612-8046 京都府京都市伏見区塩屋町228
Open : 月~金 11:30~14:30 (L.O.14:00)/17:00~22:00 (L.O.21:00)
土・日・祝 11:00~14:30 (L.O.14:00)/17:00~22:00 (L.O.21:00)
Close : 年末年始(12月31日・1月1日)
Tel : 075-611-9919
Website : http://kizakura.co.jp/restaurant/country/index.html

Map :

 

さて、ここで一度思い出してみよう。そういえば、3000円でどれだけ酔えるかというのが今回の企画だった。
悲しい哉、カッパカントリーを利用すれば残り2000が一気に吹き飛んでしまうのは確実。
今は我慢して次を目指すことに。

 

黄桜 伏水蔵

黄桜の工場に行けば試飲ができるらしいという噂を耳にした。
そしてカッパカントリー駐車場から無料の送迎バスが出ているということでその場所に着くと・・・

本日は竹田街道に発着。ってそれ範囲広いな!下には少し小さいフォントで、バス停「京橋」付近とある。
付近ってなんだよ。。とりあえず向かおう。

竜馬通りを歩き、

 

寺田屋事件で有名なあの寺田屋の前を通り京都府道115号線に出て右に折れるとありました「京橋」停留所。

ここに本当に来るのだろうか。どんな形をしているかもわからないバスを待つこと数分。
予定時刻を過ぎ不安が膨れ始めた頃

 

「来た!」

カッパの絵が描いてある。よし、一安心。
ちょっと待てよ。これはもしや市営バスの客と間違えられたら止まってくれないのでは?
手を振らねば!
「おーい!」
「おーい!」
大の大人が恥ずかしげもなく手を振ること数秒。


その甲斐なくバスは無残にも目の前を通り過ぎて行った。

ポカーン

やべぇ!!走れ!!
どこ行くねん!!と、のん気なカッパの絵が描かれたバスを追いかけた。
運ちゃんはバックミラーに映る必死に走るオッサンの姿を確認できているはずだ。
全然止まってくれんやんけ!
この時ほど徳利背負ったカッパが憎たらしいと思ったことはない。ちなみにこいつ↓

出典:http://www.kizakura.co.jp/

ようやくバスが止まったその場所はカッパカントリー駐車場であった。
今日はここにはバス来ませんて書いてあったじゃないかーー!!
カッパはこれほどまでに狡猾な生物だとは。愛嬌のある顔に騙されていたのか。
もうその頃には1軒目の酒なんぞはすっかり抜けていた。

気を取り直してバスに乗車。
バスに揺られ15分ほどでようやく着きました伏水蔵。

デカい。5階建てのこの施設では日本酒とビールの生産過程が同時に見られるという日本初の工場見学ができるのだ。
オープンして間もないきれいな館内は全て見学者のために設計されおり、余すところなく酒造りの醍醐味が体感できる。

受付のきれいなお姉さんに案内されたのをいいことにバスの一件での溜飲を下げ、2階へ。
ガイダンスシアターで穀物からアルコール飲料になるまでの杜氏の頑張りっぷりとか情熱とか企業理念などなどを観る。
映像の中で試飲する職人さんのビールがなんと美味しそうなことか。こちらは全速力して喉が乾いているというのに。

その後は5階からワンフロアずつ降りながら見学する仕組み。


そこでまた残念なことが発覚。

工場が動いてねぇ!

今日は祝日。職人さん誰もいらっしゃいません。
麹を作っている姿も、ましてやビールの機械が動いている心踊る場面も遭遇することなく階下へ。
ただ、すごいのは埃チリ一つ落ちてないこと。
何も動いていないその部屋のクリーンさにひたすら感動したのを覚えつつ、パネルでお勉強。
(工場内は撮影禁止なのでごめんなさい)

 


黄桜は今全国で大ブームを起こしている地ビールの先駆けだったのだ。
1995年の規制緩和による醸造免許を全国7番目に取得。
この地ビール元年以降、京都ご当地ビールを牽引して来たのが「京都麦酒」ブランド。

出典:http://k-tomiya.shop-pro.jp/?pid=90145526

今では多くの種類があって紹介しきれないが、個人的にグっと来たのがこれ。

出典:http://www.kizakura.co.jp/products/beel/index.html

「黄桜 ホワイトナイル」
黄桜と早稲田大学、京都大学との共同開発。
あの吉村作治教授らによって特定された古代エジプトの絶滅した種、エンマー小麦。
それがなんと京都大学で発見されたというエピソードを持つ幻の小麦。
これを量産してビールにしちゃおう!
という古代エジプトなのに現代の京都で完結してしまった感のある壮大なのかお手頃なのかスケールが
よくわからないところが好印象。

さらにスパークリングの日本酒を20年も前に開発していたという事実。

出典:http://www.kizakura.co.jp/products/sparkling/index.html

今でこそ女子の間で人気沸騰中の炭酸日本酒だが、当時はふるわなかったとか。
スパークリング清酒もラインナップが豊富。お酒好き女子にプレゼントにすると喜ばれそう☆

そんな感じで2階まで降りてきてようやく試飲タイム。
本当に、ここまで長かった・・・。

スタンドバーで注文したのは

 

出典:http://www.kizakura.co.jp/products/beel/index.html

「黄桜 京都麦酒 ケルシュ」(350円)

美味である!!
キリッとした外資系風のバーテンお兄さんが注いでくれたビールが不味いわけがない。
クラフトビールの歴史というものを黄桜を通して堪能させていただいた。

黄桜の伏水蔵は旅行会社がやっている日帰りツアーなどで参加するのもテである。
クラフトビールや清酒を200席もあるビアホールでワイワイ飲みながら楽しめそうだ。
何より工場が稼働している。これが最も大切。

所持金2070円
酒代350円。
残金1720円。

『黄桜 伏水蔵』
〒612-8242 京都府京都市伏見区横大路下三栖梶原町53
Open : 月~金 10:00~16:00
Close : 年末年始(12月31日・1月1日)
Tel : 075-644-4488
Website : http://www.kizakura.co.jp/husimigura/index.html

Map :

そうそう忘れていた。
黄桜とカッパの関係だが、黄桜2代目社長が週刊朝日で連載していた「かっぱ天国」を見つけ広告モデルとしたことから
それ以後漫画家の清水崑が描くカッパが黄桜のイメージとして定着することとなる。
私としては清水崑を引き継いだ小島功のカッパの絵が印象に強い。
なぜかってとにかくエロい。


巨乳のカッパのねえちゃんがCMで流れるたび、こんなスケべなカッパをテレビで出していいのかと
幼心に当時の大人たちのモラルに疑問を感じていたくらいである。
今ではその巨乳カッパねえちゃんの虜となってしまった。隣接のショップで湯のみと皿を衝動買いするくらいである。
大人になるってこういうことなんだよ、と昔の自分に言ってあげたい。

屋台居酒屋マル八

忘れないでもらいたいのだが、今回は3000円でどれだけ酔えるかという試みである。
今のところ日本酒おちょこ3杯とビール1杯しか飲んでいない。
これで酔えというヤツの方がむしろ酔っている。
そこで大手筋商店街に戻って残り2000円でベロベーロにさせてくれる店を探すことにした。

時間はまだ2時である。果たして昼ベロ店はあるのか!?
割とすぐあった!

横並びに似たような店が連ねている。
どちらも大阪の串カツ屋さんの雰囲気。とりあえず入ろう。

昭和だけど今風の店内。
んなこたどうでもいいんだよ。早く飲みたすぎる!
なりふり構わず注文したのはとりあえずビール(270円)!←安すぎる!!

グビビビ・・・
プハーッ京都麦酒の方がうめぇ!
ってなったが、ここからは水木しげるが描く食事のシーンで有名な『ガーッ!』を再現してみることにした。
鶏皮ポン酢(360円)、串カツ盛り(580円)!

ムシャムシャバリバリ!!

うまい!!
テーブル上が片付く頃にはイイ感じに酔ってきた。
そこで気になっていた隣の店にも入ることにした。

所持金1720円
酒代1210円。
残金510円。

『屋台居酒屋マル八』
〒京都府京都市伏見区東大手町749 フロムファーストビル 1F
Open : 月~土 11:30~25:00
日 11:30~24:00
Close : 年末年始(12月31日・1月1日)
Tel : 075-604-5212
Website : https://www.hotpepper.jp/strJ001134181/

Map :

 

屋台居酒屋 大阪MANMARU

野口英世氏とお別れした後、手元にあるのは残り510円だが、まだいける!2杯は飲める!
日も明るい内からチャラ銭を握りしめて酒にブチ込む今の姿は断酒会を抜け出したアル中患者そのものである。

このお店はお隣さんとテイストが全く一緒だ。言うなれば和民と白木屋が並んでいるようなものだ。
しかしこちらの方が、こんな時間から既に賑わっている(15時)。
この謎は酒飲めばわかるかもしれない。

 

まだまだ飲むど!酒持ってこーい!
生ビール290円。

グビビビ。

うめゃあ!と思ったのは良いがふと計算するとあと210円!
なんて無計画な使い方をしたのだろうか。これではさすがに何も出してくれないだろう。
しかもベロンベロンには程遠いし、お腹も減ってきた。

ここで、しつこいようだが今日のテーマのおさらいをしてみよう。
「伏見で昼から3000円でベロベロ」だ。
助詞を除くとキーワードが4つある。
朝から今日の行動を振りかえってみるとキーワードの3つはクリアしている。
3/4はなかなかの成績ではないか。ただ、残念ながらベロンベロンだけは達成できなかった。

そこで私は見方を変えることにした。

ベロベロになるために3000円以上出そう

どうだろうか。
3000円が達成できないというだけでキーワードの3/4クリアという成績は同じではないか。
つまりベロベロと3000円をバーターしたのである。
なんて賢いのだろう、私。
そもそも目標というものは完璧にこなすのは無理な話である。
目標は高く設定しておいて結局はほどほどの具合のところに着地するのが世の常である。
今回もよく頑張った。そしてほどほどのところでこの企画は終わった。

うむ、これで心おきなく飲むことができる。

ジムビームハイボール(???円)、餃子(???円)とホルモン焼き(???円)!!

 

こうして伏見の日は暮れてゆく・・・・。

『大阪満マル』
京都府京都市伏見区新町5-510-2 奥田ビル 1F
Open : 11:30~翌3:00(L.O.2:15)
Close : なし(年中無休)
Tel : 075-621-1347
Website : https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260601/26020652/

Map :

 

総括

安くて味もそこそこいけてベロンベロンにしてくれるのは、わかってはいたが大衆居酒屋がベストである。
ほとんど年中無休の上に深夜まで酒を出してくれる飲んべえの心強い味方なのだ。
自明なことを丸一日かけてわざわざ検証したが、これこそまさに酔狂・・・というのはカッコよく言い過ぎで、ただのアホのアル中だ。
昼から気持ちよく酔っ払いたいあなた、大手筋商店街はいつもあなたのそばにいます。

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坂本龍馬も愛した酒どころ伏見で昼飲み3000円ベロベロツアー