スペースねこ穴

潜入!京の魔境!『スペースねこ穴』

でんがみ

京都に移住して方々でその存在を耳にする「スペースねこ穴」
居酒屋というより人んち?
いや、それ以上の魔界が広がるという…
「一見さん」には敷居が高すぎるという件の場所へ、遂に足を踏み入れた。

猫になったつもりで探す。

住所通り向かうも狭い路地の奥にも家が連なる京都独特の景観により、路地に続く入口を見つけるのに困難を極めた。
グーグルマップ上で表示されるねこ穴の敷地を、ぐるぐると2周半。ついに入り口を発見!
狭くて暗い路地を進むと家の灯が見えた。
キリンビールの提灯が辛うじて居酒屋感を出すものの、そこは完全に、人んちの「お勝手口」でしかなかった。

「おとといの宴会から片付けてません」風店内スペースねこ穴イラスト02

大学時代、汚部屋の女王と呼ばれた友人宅が頭をよぎった。
そんな学生の宴会後のような店内。
奥の席では、すでに瓶ビールを何本も開け、女子会開催中のお姉さん方がいた。
玄関は半分板が外れた立て付けの悪い障子戸。
ガタピシこじ開けて入室。閉まらなくてアタフタしていたら
「閉めなくても一緒だから開けっ放しでいいよ」
と、奥の宴会から声をかけられる。女子会の1人は店主だった。
ほぼ開け放たれた戸口からは冬の空気が流れ込んでくる。
そこで暖を取れるのは、暖房は2つ並んだコタツのみ。
おずおずと進み入る。

お膳の上、床に、酒瓶各種がゴロゴロと置いてある。
「飲み物何にします?」と聞かれるも、この店にメニュー表はない!
適当にありそうな飲み物を先に注文する。
しばらくして、なみなみと注がれた水割りが出てきた。
店主が台所に戻り、ゴソゴソと働き出したのを見て、我々のおつまみが調理スタートしたようだと察した。

サブカルチャーのカオス!たまにネコありスペースねこ穴イラスト03

一杯飲み出しようやく一息つき落ち着きを取り戻した。
覚悟はしていたものの、想像以上に情報量の多い空間で飲まなきゃ圧倒されそうになる。
ぎゅうぎゅう詰めの本棚にはガロ系やサブカル系漫画から黄金期少年漫画まで網羅されている。
部屋の一角に佇むテレビデオ。
懐かしさ溢れるデッキ口からは「風の谷のナウシカ」のVHSが無造作に覗いている。
窓際には、明和電機の「魚コード」が吊るされ、90年代アートカルチャーな遺物も端々に転がっている。
料理を待っていると、後ろの暗がりスペースから猫が登場!
コタツに入りたそうにしているが、我々が占領しているのを見て、無造作に畳の上に置かれた餌をカリカリ食べだした。

猫カフェとかいう戯れた上品さなどない。もはや日常!背景!
飼い猫の自然な風景がそこで展開される。

一度コタツに入ってしまえば、自らもこの風景馴染んでしまう。
(単に寒くて出られないだけではない。)謎の居心地の良さに、我々の「店とは?」という概念は完全に消滅した。

勝手に出てくる食べ物はドチャクソ美味い!スペースねこ穴イラスト04

さて、しばらくすると和え物と、お刺身が出てきた。
この刺身が、恐ろしく美味い。
店の廃墟っぷりからは考えられないくらい新鮮。
さらに魚の煮付けも登場。
この煮付けも、えらい美味い!
おそらく先ほど刺身で登場した魚のアラと思われる。
甘辛な味がしっかり染み込んだホロホロの身をほじくる。
思わず酒が進んでしまう。
その日仕入れられたおかずをみんなでシェアする。
そんな感じで、同じメニューが各席に並ぶ。

そろそろお暇しようかなというところ、さらにもう1品というか、メインディッシュ!熱々の鍋が登場!
アサリと小さいお餅がコロコロ入った海鮮お雑煮風鍋。
素朴でシンプルだが貝の出汁が効いてGOOD。
思いの外、お腹の満足感ににっこりしつつ、お勘定を聞けば、3人で行っても3000円とかからなかった。

確かに得体の知れない巣窟感はある。
だが1度中に入ってしまえば、すんなりと空間に受け入れてもらえる。飯も美味い。酒も安い。
人見知りと潔癖症でないのであれば、ぜひ1度は訪れてもらいたい裏京都スポットだ。

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