こんな京都ロケもありなのか!
観光色に染め上げられた我々の、京都イメージをぶっ壊してくるインド映画がある。
『JILLA(ジラ)』
インド映画の若大将的存在、ヴィジャイ主演のアクション映画
とある街を統括するギャングの息子サクティ。
警察官に実の父を殺された過去を持つ彼は、ある事件をきっかけに、警察官への道を歩み、ギャングの親玉である養父と対立することに。
後半、主人公とヒロインの桃源郷的イメージ映像として挿入される「kandangi」というミュージックビデオシーン。
京都の名所と鳥取で撮影されている。
インド×東映太秦映画村+和服美女
1秒前インドにいたはずが、デュエットソングとともにニッポンっぽい世界にダイブ!!
ジャパニーズ感推し洋画にありがちな中国っぽい感じは一切ない。
むしろ和服美女達もきちんと着付けされ、手前でインドカップルが軽快なステップを踏んでいる違和感を除けば、まごうことなき「日本」の映画村である。
インド×伏見稲荷大社
漢字が読める者が観たら絶対違和感を持つのが千本鳥居のシーン。
「奉納者」のお名前丸見えの裏側からの斬新カット。
日本人監督ならこの角度でやりたくても文字が気になり撮れない。
「奉納 ○○株式会社」一覧をバックにイチャイチャステップが展開される。
手前のどうでもいい遊歩道の柵すらダンスにからませてくるのがシュール。
極め付け!インド×あだし野念仏寺
「さいの河原」に沢山積まれた石の塔たちを縫って、インドラブソングをBGMに、無縁仏の皆さんもうっとりな、天竺美女による踊り念仏ダンスタイムが始まる。
少々禍々しいと思っていた石塔が、ダンスホールを埋め尽くすオーディエンスにさえ思えてくる。
かつてここで踊ろうという発想に至ったのは妖怪ぐらいだろう。
最後はしっぽり、竹林で愛を囁く
同じく嵐山やあだし野念仏寺境内で撮影されるシーン。
竹林の遊歩道は、パースが奥まで伸びる気持ちいい構図。
しかしJR東海CMとも一味も二味も違う世界観に仕上げてくる。
さて、今更お知らせするがこの映画、京都が舞台ではない!
いつも数十人〜数百人のモブダンサーを引き連れ歌い出すインド映画主人公たち。
しかしJILLAのミュージックシーンはそれまでとは打って変わって、主人公とヒロイン「2人だけのラブラブ夢の世界」という感じで京都の名所が出てくる。
京都としてではなく、日本のどこか…
もっと言えば、しっとりラブソングの背景としてしか扱われていない。
挿入される数あるミュージックシーンも、ここだけが海外ロケ扱い。
ふんだんにクレーンカメラでダイナミックな撮影を導入しているし、和服の着付けや風景も日本人が見ても自然な感じに仕上げているし、このシーンのためだけに来日し、
日本人美女を集め、撮影地を抑えたと思うと、いかに豪華でこだわり深いカットなのかわかるだろう。
ただし、これだけ日本的記号を背景にしながら、染まることなく、どこでもカリー風味なフィールドに変換してくるんだからスゴイ!
和服の鮮やかさが日本庭園に映えるように、インドのビビッドな色彩衣装もまた、侘び寂びの効いた日本の風景にマッチしたということなのか。
それを感覚的に捉えているからか、極力モブは背景に入れず、演出はカメラワークとカット構成のみに留めているのも好感が持てる。
これは演歌・歌謡曲のプロモーションビデオやカラオケのイメージビデオに近い気がする。
ちょっとべたな観光地(城とか寺とか)を背景に、カラフルなスーツをバチっと決めた演歌歌手が、美女を片手に拳を入れて歌い出す。
それを日本人だったら純和風にこだわりそうなカットも、発想も場所も自由に、日本らしさを見せるのではなく、あくまで俳優達を魅力的に見せる道具として添えるところに、
インド映画ならではの力強さを感じる。
一風変わった京都映画をご所望なら、ぜひウォッチして頂きたい一本である。

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