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「祇園祭の見所は山鉾巡行だけではありません」詳しすぎる、辻井輝幸の京都随想記

辻井 輝幸

第十四回「祇園祭は山鉾巡行だけじゃない」

祇園祭について書いてみようと思います。
京都の祇園祭は7月1日から7月31日まで行われる八坂神社の祭礼です(全国各地に祇園祭があります)。
私の実家は八坂神社の祭礼を支える鉾町ではありませんし、氏子でもありませんでしたが、毎年実家から歩いて見に行っていました。
私は学生時代、4年間新聞配達のアルバイト(朝刊)をしており、その内3年間は祇園祭の鉾町が担当地区だったので、結構この辺りは詳しいです。
しかし、実を言うと京都の祇園祭(他の地方にも祇園祭はあります)というのはとんでもない歴史ととんでもない宝物、とんでもない規模のお祭りです。
私でも祇園祭のすべての行事を見ていません。
八坂神社の行事は1か月の間にたくさんありますが、その他に各鉾町にも独自の行事がいくつもあって(非公開の行事もあります)、全体ではどれだけの数になるのか私もよく知りません。

 

子供の頃には、同年代の鉾町の子供に対して、複雑な感情を持っていました。
鉾町に生まれ育った子供たちは大変です。祇園祭の始まる何か月も前から祇園囃子(ぎおんばやし)の練習をしないといけないし、いろいろな世代の大人たちの中で長い時間を過ごさないといけないし、遊ぶ時間がなくなってしまう。
勉強時間もなくなるしとも思っていました。

でも、その一方で鉾町の同世代の子供たちが、一つのことに集中できるものを持っていることを羨ましい気持ちにもなり、テレビの全国放送のニュースにその子たちの頑張っている姿が映ると、「それに比べて自分は何をしてるんだろうと?」と自己嫌悪に陥ったりしました。

祇園囃子を演奏する子供たちやわらべ歌を唄いながら護符を販売する子供たちなども、将来大勢の人の前でも物怖じすることなく、その実力を出せるような気がします。
鉾町に生まれ育った子供はそのような機会が与えられて、今考えると幸せだと思いますね。
祇園祭だけでなく、京都にはいろいろな祭礼などで、そういう機会に恵まれた土地のように感じます。
都会でありながら昔からのコミュニティが残っている街だからでしょうか。

 

全国的には山鉾が有名な祇園祭ですが、神様の乗られた神輿が氏子の住んでいるところをまわる前に、その場所を清めるために行われるのが山鉾巡行です。
ですから、巡行した後の山鉾には厄や穢れを集められているので焼いてしまうべきなのでしょうけど、そういう訳にもいかないので解体して焼却の意味に代えています。
そういうことなので、本来巡行が終われば、すぐに解体しなければいけないはずだったのですが、巡行が終わると体力的に解体するのがキツイのか、翌日に解体するようになってきた所が多くなってきたように思います(私は解体作業を見るのが好きです、組み立てより短い時間で鉾の構造が分かるので)。
個人的には前祭巡行の午前の山鉾巡行だけ見て、夜の神幸祭の神輿を見られない方が多いのが残念ですね。
巡行の「雅」に対して神輿渡御の「勇壮」さも見所です。

前祭の山鉾巡行当日は見物客が増えたために、以前のように「くじ改め」・「注連縄切」・「辻廻し(何ヵ所もあります)」・「新町通(細い道)」などの見学ポイントを何ヵ所か移動しながら見る事が難しくなりました。
欲張らずに早めに見学ポイントで待機して、「今年はここで見学」と割り切って下さい。

14日~16日の間、各鉾町の会所ではその町の所蔵する宝物などを一般に公開します。
それと同時に「屏風祭」と呼ばれる風習もあります。
いくつかの家や商店が、その家の家宝というべき屏風などの美術・工芸品を一般に公開するんです。
昔はその家の娘さんがその時に、「あそこの家には、年頃の気立てのいい娘さんがいる。」と世間にお披露目をする目的もあったとか。

 

私は綾傘鉾の棒振り囃子をここ数年、見ています。2018年の予定を見てみると、14日~16日までの間に祇園囃子と棒振り囃子が行われます(綾小路通室町西入ル)。
棒振り踊りの最初で狂言の「土蜘蛛」の蜘蛛の糸が使われます。
細い紙が飛んで来るのを見て、見物客から歓声が上がり、その歓声を聞くのが楽しみになってしまった感じです。
紙の先についている錘の部分を財布に入れておくと、お金が貯まるとか、タンスに入れると服が増えるとかいいます。
綾傘鉾の棒振り囃子は一例ですが、各鉾町のいろいろな所でイベントが行われます。
24日は後祭の山鉾巡行の他にも花笠巡行があり、華やかで(女性や子供の参加者が多い)楽しいです。
そして、夜には還幸祭の神輿渡御も。
露店が出るのは前祭の15日と16日の2日間ですが、(15・16日の)18時以降は四条通などが歩行者天国になります。
昨年でしたか、四条通(祇園付近)の普段は車道のど真ん中にビアガーデンが出現して舞妓さんや芸妓さんが給仕しているのを見て驚きました。

祇園祭は楽しいです。ただ、人が多いので覚悟してくださいネ。

 

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辻井 輝幸

辻井 輝幸

【京都観光ガイド】1956年、京都市下京区の生まれ。京都産業大学経済学部卒。子供の頃の遊び場は東本願寺と西本願寺。京都の事なら、何でも興味あり。得意分野は「美術(絵画)・建築(昭和初期以前)・天文(歴史関連)」、趣味は「歩くこと(1日に4万歩以上歩くことも)」、資格は「京都観光文化検定1級・茶道文化検定2級を所持」
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